第1章

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「ねぇ、どっか寄ってくー?」 「クレープ食いたい」 皐月の問いかけに、実里が即座に回答する。 別に俺はいいんだが…。 チラッと俊希の方を見る。 何も言わないが、こいつ用事があるんじゃねーの? 「俊希。お前は?」 用があるんだったら無理に付き合わすわけにもいかないし、俊希にも話を振ってみた。 「……俺。用、あるから。帰る」 やっぱりあるのねー。 つか、自分から言えよな。 まったく世話がかかる奴だぜ。 「そーなんだ?じゃぁ、バイバイ俊希~」 「…………………」 黙って手を振って立ち去って行った。 俊希の後ろ姿を見送りながら、皐月が「さて」と仕切り直した。 「俊希の後を追おう」 ほら来た。絶対言うと思った。 俺も何度かつけられてた覚えあるし。しかもその時母親との買い物の最中だった。案外親とは仲が良いから、その様子を見てしばらくは「マザコン」とか呼ばれてた。 「俊希の後を追うのもいいけど…とりあえずクレープ食べたい」 「買ってる間に見失うでしょ!大丈夫、後で裕也が奢るってさ」 「マジで?俺あのバナナ&ストロベリーチョコスペシャルな」 「ボクストロベリーカスタードがいいなぁ~」 「何で俺が買うんだよ!つか、さりげなく皐月まで?奢らねーよ?」 「ケチ」「ケチ」 「てめーらふざけんなよ…」 本当に一瞬殺意が芽生えた。 奢るのが本気で嫌ってわけじゃないけど、理不尽過ぎんだろ…! 「とにかく俊希を追うよ!すでに見失いそうだし!」 見てみると、随分と遠くの方に姿が見えた。 …まぁ、たまにはいいか。尾行する側ってのも。 そうだよ、一回くらい罰は当たらないさ。うん。 「…誰か待ってんのかな」 「そーなんじゃない?時計をチラチラ見てるし」 俊希が公園の時計台の辺りに立ち止まって十数分。 皐月の言う通り、時計を見たりソワソワしたりしているため、人と待ち合わせをしているらしい。 にしても…。 「何で俺らは木の枝持って草木の中に隠れてんの?」 「え、定番でしょ?この隠れ方」 「そりゃアニメとかではな」 腹黒かと思えばこういうとこもあるからなぁ…。 俺が皐月を微妙な目で見ていると、実里が「あ」と声を出した。 「待ってた相手、来たみたい」 見ると、どうやら女の子と待ち合わせをしていたらしい。 つか、すげ美人。モデルみたい。 …え、何、どうゆう関係?
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