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別に「悠斗」って呼んでもいいんだけど何と
なくタイミングが掴めずに今迄の呼び方のままになってる。
おまけに、お互い人前でベタベタしたりするタイプとかじゃないから実質、私達が付き合ってるのを知っているのは私の相方である、久遠と悠斗くん憧れの雪さんの、二人くらいときたもんだ。
なんだかなぁ。
思わず空笑いしてしまったこんな時でさえ、彼は気づきもしない。
「ね、宮城くん」
「あ?どうかしたか」
「……ううん、なんとなく呼んでみただけ」
「はぁ?……ったく変な奴」
「あはは。ねぇ、宮城くん今度の土曜か日曜日……」
「あ、悪ィ。土、日は神城さんに勉強教わる約束してんだ」
「……あ、そっか。じゃあ仕方ないよね」
「あぁ、また今度な」
「うん」
そう。
こんな調子で悠斗は何事にも神城 雪、優先なのだ。
今日だって神城 雪が「用事がある」と早めに下校したからこそ、久々に一緒に帰れてる訳だし。
あぁ、本当。
「……何だかなぁ」
退屈で、暇で、悲しくて。
いつも、いつも。
そんな淋しい毎日を何度も何度も繰り返し過ごしていた。
――そう。
あの日、君に出逢うまで。
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