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俺は夢を見ていた。
そう。
これは夢。
もう何度同じ夢を見ただろう。
決まって毎週の金曜日にこの夢を見る。
―――――俺が死ぬ夢。
毎回同じ「化物」に同じ殺され方をする。
今まさにその夢の中に俺はいる。
「貴様にはここで死んでもらう。」
深い緑という緑に囲まれた森で、身長3mはあろうかという化物が俺の目の前に立っている。
その化物は、俺の知識の中では「ゴブリン」というのに相応しい成りをしており、その体に見合う大きな斧を肩に担いでいた。
地面の茂みの上にしりもちをついた俺は、ジリジリと化物に距離を詰められていく。
掌に伝わる草木の感触は、いつもと同じ。
化物の表情の動きもいつもと何も変わらない。
そして聞き慣れた化物の声で冷酷に、残酷に肩に担いでいた斧を静かに振り上げながら死の宣告を俺に告げる。
「罪は償ってもらうぞ。」
振り上げられた斧は太陽の光を浴びて、反射した太陽の光は俺の顔を目掛けて飛んでくる。
反射的に目を瞑ったままの俺は、まぶたの裏側に残る違和感が消えるのを待ち、そっと目を開ける。
目を開けた先には、すぐ目の前にある斧が真下にいる俺目掛けて降りかかる瞬間だった。
「――――――ハッ。」
夢から醒めた俺は、勢い良く利き手である右手で布団を凪ぎ払う様に押し退ける。
「ッハ、ハ、ハッ、ハッ、ッ、、、」
起き上がった俺は胸を押さえながら、荒くなった息を整えていた。
額に浮かぶ大粒の汗を袖で拭いながら、ベッドの横に置いてある目覚まし時計に目を移す。
二本の針が指した時刻は午前の8時15分。
現役の高校生である俺は、見事に学校に遅刻が決定した事を悟るのに少しの時間を要したが、持ち前の処理能力でベッドから飛び出し勢い良く制服に着替える。
少し髪の毛が周りの人たちより長い俺は、耳の横に垂れ下がる黒い髪を耳にかける。
ほんの1分足らずで身支度を終えた俺は学校指定のバックを肩にかけ、玄関に向かう。
玄関に向かう途中で誰にも会うことは無く、無人の我が家に「行ってきます」と小声で口にしながら重い玄関のドアを開ける。
開けた途端に元気いっぱいの太陽の光が俺を襲う。
「うっ。」
反射的に目を瞑った俺は、あの最悪な夢の事を少し思い出す。
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