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普通ならば、自分が見た夢なんて数分もすれば断片的にしか思い出せない。
でも俺は違った。
いや、違うのは「俺」では無く、きっとあの「最悪な夢」なのだろう。
高校生になってから毎週の金曜日に決まって見るこの夢は、何回も見るうちに、まるで俺が実際に体験したかのように俺の記憶に刻まれている。
自分でも少し、おかしいなと思うときはあるが、さほど気にはしていない。
せいぜい毎週金曜日は「イヤな日」としか認識していない。
なぜかというと、別に金曜日が嫌いなのではなく、あの「最悪な夢」を見る日がイヤなのだ。
それがたまたま毎週の金曜日なわけで、そのおかげで、毎回学校に遅刻しそうになるのだ。
というか大体が遅刻だ。
今日もいつも通りに遅刻しそうになっている俺は、半分まだ寝ている頭で愛用しているママチャリにまたがる。
前に付いている籠にバックを無造作に投げ入れ、元気いっぱいの太陽を背にしてペダルを漕ぎだす。
ママチャリ特有の漕ぎ初めのペダルの重さに顔を歪めながら、弱々しく
「だから金曜日はイヤなんだー。」
太陽に向かってきっと届かないであろう声で、そう叫んだ。
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