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「皮肉なものだね。
母の病状は手遅れだったけど、自分に巣食うウィルスを使って母が開発した治療薬が、仇の命を救うんだから」
苦々しくこぼされた言葉。
その意味を理解して向けた驚きの目に、泣き笑いの表情で揺れる、不思議な色の瞳が映った。
「ひどいな、花純。
僕の事を鬼か羅刹みたいに思ってるんでしょ」
「だって」
「もし万が一、羽田へ向かう途中にウノが事故に遭ったとしても、それは僕のせいじゃないよ」
要するに、「自分は何も細工していない」と、身の潔白を暗示しているのだろう。
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