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翌朝、車にバッグを積み込む夫の背中を眺めながら、私はぐずぐずとベソをかいていた。
「……そんなに寂しい、花純?
君がポケットに入るサイズに変身できるなら、僕は躊躇なく君を連れていくんだけどね」
「そんな能力ないもの。
碧さんの意地悪」
軽い冗談とキスをくれてから、碧さんは運転席に乗り込んで窓を開け、見送る私に手を振ってみせる。
「行ってきます。
もし花純が寂しくて眠れないなら、高速飛ばして帰ってくるから、安心して」
学会が開かれる長野から世田谷までは、いくら急いだとしても、2時間は掛かってしまう。
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