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周囲に気をはらい、こそっと元の場所に戻る。
さっき、握られた手がまだ痛い。
無理やりキスされた、唇が熱い。
酷く嫌になる。泣きそうだ。
あたしは、遠くに見える北川くんを見つめてみた。
真剣な顔で仕事に取り組んでいる。
そんな姿に、なぜか癒された。
あたしの、視線に気づいたんだろうか北川くんと目があった。
びっくりして、慌てて視線をそらした。
ヤバい!気づかれた?
平然を装い作業に戻る。
「柚夏!どこ行ってたのよ?」
同期の愛弓が走りよってくる。
「トイレよ。」
「トイレにしては長すぎじゃない。有坂君と話てたでしょ?」
「なんで知ってるのよ?!」
「偶然見たのよ。あたしもトイレに行ってたから。」
嵐とのやりとりを愛弓に見られても別にかまわないけど。
嵐は独身出し。不倫とかってわけでもない。
作業しながら、また、北川くんを見てみる。
さっきとは、違ってあたしの視線に気付きもしない。
それが、なんか悔しかった。
もっと、意識させたい。
どうして。彼はあたしを見てくれないの。
なんか。むなしい。
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