第1章

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仕事が終わり駐車場に向かう。 あたしの、すぐ前を北川君が歩いてる。 けど、あたしは声をかけれない。 華奢な後ろ姿が。なんだか可愛い。 黒のTシャツに、ジーパン。 茶色に染めた髪。柔らかそう。 触れてみたい。 届きそうで遠い距離。 手を伸ばせば、届きそうなのに。 あたしは、グッと右手を握りしめる。 車に乗り込む彼。 「お疲れ様。」 通りすぎる彼の車に、小さくそう言ってみる。 視線なんて、恥ずかしくて合わせられない。 勇気ないあたし。 悔しくて。 あたしの、横を通りすぎた彼の後ろ姿を黙って見つめた。 明日が早くくれば、いいのに…。 彼に会えない時間は、長くて。 せつなくなる。 こんな気持ちが恋なのかな…。 なんて、思いながらあたしは車に乗り込むと家路についた。
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