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「神様ァ?知らないわねえ……」
「そこを何とか調べてくれませんかね」
翌日、桜ノ宮の近くに建つ星ノ宮大学に和泉は向かった。無論目的は一つ、刹那の姉であり、自称魔法少女に会うためである。
見つけるのは簡単だった。ふわふわとした淡い紫の髪こそ違うものの、その月の色の瞳は、弟と同じものだ。
彼女、夕霧雛はサークル活動を終えて帰るところであった。この系列の学校はそんなにミステリーが好きなのだろうか、この大学にもミステリー研究会すなるものがあるらしい。
そこを取っ捕まえて手短に説明をすると、彼女は難しそうに首を傾げた。因みに、彼女も千雪を知らないと言った。
「何とかと言われても、神様の事は私専門外だし……」
「魔法少女なのに?」
「魔法少女だからよ」
困った様に頬に手を宛てる雛に、和泉は痺れを切らした様に大きな溜め息を吐いた。いくら刹那と同じ血が通っているとはいえ、大学生という幾分か大きく見える肩書きを持った彼女を頭ごなしに馬鹿には出来ない。
そこで和泉は、あたかも残念そうに眉を下げた。
「あーあ、僕雛さんの事頼りにしてたんだけどなあ」
「い、いきなり何よぅ……?」
「だってー、魔法少女ですよ?神様なんか魔法で倒せちゃうんですよ?」
撫でる様な声を出して、精一杯相手を労ってみる。当然、いつもと違う様子の和泉に、雛は軽く身震いを覚えた。
「雛さんみたいな偉大な魔法少女様なら、きっと知ってると思ったんだけどなァ」
「偉大な、魔法少女……」
夕霧雛はこの言葉に滅法弱い。自分を魔法少女と名乗る事に何よりもプライドを持つ彼女は、ぴくりと肩を動かした。
いけた。そんな彼女を見ると、和泉は猫なで声の奥でガッツポーズをした。
「ももも、勿論!この偉大な魔法少女の私に知らない事なんて無いわ!」
「じゃあフェルマーの最終定理の証明教えてください」
「わかんないわ!」
よーし、調べてやるわ!と彼女は駆け足で大学へと踵を返した。途中で、同じく帰る途中であったのだろう黒髪の女を巻き込んでいた。つくづく迷惑な人だ。
でもこれで、確かに一つ道しるべは出来たのである。
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