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ひっきりなしにかかってくる電話と、秒単位で受信される重たいファイル付のメールを捌きつつ、今日一の客に向かう準備をする午前10時。
「お電話ありがとうございます、(株)〇〇、錦戸です。」
どっくんはエライ。どんなに忙しくても2コールでだいたい電話にでる。
「_____えっ?村上くぅん?なんやねん、外線やったから気取ってしまったやんかぁ!」
え?ヒナ?
「いやや、めっちゃ恥ずかしいっ!____今日こっち出張なん?ここ寄る?__じゃ、待ってるw……白いの?おん、おるで。」
なんやねん、このくそ忙しい時間に。
「よかまくん、保留1番、村上君!」
「『死んだ』言うて」
「なに恥ずかしがっとんねん、早よ出ろや!こん茶髪っ!!」
怖っ!どっくん、前科者の顔になっとるって!
営業鞄抱えたまんま保留ボタン押してしぶしぶ電話に出ると、『よこぉ?お疲れぇ』なんてすっとぼけた声が耳に響く。
「疲れてへん」
『うそやん、疲れたぁ言うて帰ってくるやん』
「言うてへん」
『言うてるよ』
「じゃあ、もう言わへん」
『ウハハ。なぁ、あんたの会社用のケーバン教えてぇや。前のんつながらんで』
「会社辞める言うたら総務に取り上げられたわ」
『ほんだら今、私用ので連絡とってんの?』
「イヤ。プリペイド渡されとる」
『教えて』
「私用のにかけてこいや」
『あんた仕事中は私用の出ぇへんやん』
「090-****-****」
『ちょ、待って!………ん?それ、俺の番号やんけぇ!』
「ヒャヒャヒャ!よぉわかったな」
『わかるわ!我がの番号くらい!』
「今日も遅なると思うから先帰っといて。鍵、持ってるやろ?」
『おん、わかった。じゃ、後でなぁ』
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