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無事に引き継ぎの挨拶も終わって、馴染みの喫茶店に大倉を連れてきた。
昔ながらの趣ある店で、何時間も煮込んではるいうビーフカレーはバカみたいにデカい肉がゴロゴロ入ってて、俺の胃袋をいつも満たしてくれた。
「ハア~、めっちゃウマい…」
大倉は口いっぱいに肉を詰め込んで幸せそうやけど、シュッとした顔が台無しになっとる。
「ここのカレー食いたいから、あそこの客にアポとる時、お昼前後にすんねん。ひゃひゃひゃ」
「俺もそうしよ~」
「営業の楽しみ言うたら、どこで昼飯食うかくらいしかないからな」
大倉は大盛りのカレーをものの数分で平らげた後、食後のコーヒーを優雅にすすりながら、やたら男前の顔を俺に向けた。
「横山君さぁ」
「なんや」
「村上君のこと、ちゃんと考えてんの?」
大倉はヒナの元部下や。大倉が東京にいてる時に相当しごかれた聞いてるけど、その分懐いてるんやろな。
「…考えてるよ」
「なら、ええけど」
いつも、考えてるよ。
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