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「ヒナ」
「…」
「養親になるん、年上のほうやないとアカンねんて。だから、保険証とか年金手帳とか、名前変わって面倒になってまうのはお前やねん。ごめんな。」
「…」
「ヒナちゃん?」
「ぶっ!____ぅくくくくく。ウハハハハハ!」
俺の予想の斜め上を行って、ヒナは豪快に笑い出した。
なんでやねん、泣きながら俺に抱き付いてきたりとかせぇへんのか!?俺のイメトレ時間返して!
「笑うなや!俺かて悩んだんじゃ!!」
「いやいやいや。ちゃうねん。めっちゃタイミング合うなぁ、思たら笑けてきて…うくくく。ヨコォ、冷蔵庫開けてきて」
「冷蔵庫?」
腹抱えて笑てるヒナに言われた通りちっさい扉を開けると、中にはリボンのついた小さな箱が入ってた。
「これ、何?」
「んぅ?誓いの輪ぁ」
「誓いの輪て」
「来年やるぅ言うて、去年もくれへんかったやんか」
ヒナは口を膨らませて俺を睨む。可愛いだけで全然怖ない。
「そうやったっけ」
「せやで!ほんだら俺もう好きなん買うたろ、思て。___ヨコ、手ぇ出してぇ」
ヒナは小さな箱のリボンを丁寧にほどいて、プラチナ色した輪っかを取り出し、俺の中指と小指の中間に慎重にはめ込んだ。
「これから楽しいことも、辛いことも、いっぱいあるぅ思うけど、今以上愛し合っとったらなんとかなるやろ!」
「ブッ!」
ヒナがあまりにドヤ顔で左手を俺に差し出すんで、俺は思わず吹き出してもうた。
「なんで笑うねん!今泣くとこやろぉ?全米泣いとるで?」
「お互い様じゃ、アホ」
俺も小さな箱から輪っかを抜き取って、骨っぽい中指と小指の中間に差し込んだ。
「これからも、今まで通りでええねん」
俺がそう言うたら、ヒナはこぼれるような笑顔を俺に向けた。
やっぱり世界で一番可愛いわ。
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