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「納得いかない……」
メガネをかけ白衣を着た女性が、白昼の喫茶店で呟いた。
「どうかしたんですか?」
喫茶店の店員が聞く。
「いえ……大した事じゃないわ」
「はあ」
「治験でも受けてたのかしら? だけど三年は長すぎるし、何より記憶がないってのが……」
ぶつぶつ呟いていたが、店員が心配そうに見ているのに気付いたのか、笑顔で言いつくろう。
「ごめんなさい。私、ノンレムワームに感染していたらしくて、少し記憶が戻ってこないのよ……」
「そうなんですか。いえ、自分もね、この前、退院したばかりで……。なんか、ノンレムワーム最後の被害者、みたいに言われてたんですだけど」
「へぇ。奇遇ね。あなたもなの……」
「あ、コーヒーどうぞ」
店員は、コーヒーカップを置き、ソーサーに角砂糖二つを乗せる。
「あれ?」
「え? 違いましたか?」
「いえ……。でも、頼んだわけでもないのに」
「サービスですよ、たぶん」
店員は言うが、どうしてそうしたのか、自分でも良くわかっていないようだった。
女性も何か納得いかないようにコーヒーを飲む。
「もう行かなくちゃ……でも、また来てもいいかしら?」
「当然です。いつでも歓迎しますよ」
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