第1章

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 フネスは海馬の前に、いくつもの資料を並べる。 「考えたのよ。私達二人がどうしてノンレムワームに記憶を破壊されないのか」 「ん? 運が良かったか、耐性があったか、じゃないのか?」 「いいえ。それは逆なのよ。私達は最悪に運が悪くて、ノンレムワームへの耐性なんてまるでなかったの」 「はぁ?」 「私達の頭の中にはノンレムワームが巣くっている。それもかなり強力な奴が、最初から」 「何を言ってるんだ? 笑えない冗談だな」 「冗談ならどんなによかったか!」  フネスは、これが証拠だ、といわんばかりに資料を海馬の方に押しやる。 「おい。変な事を言うな。俺達の記憶は消えていない。毎週、テストをしてるじゃないか!」 「そうよ。私達の記憶は全く消えていない。100%維持され続けている! それがおかしいのよ!」  フネスは、並べた資料を叩く。 「だって、人間の記憶なんて曖昧な物よ。99%を覚えているのなら解る。でも、100%全て覚えているなんて、理論的にありえない」 「俺達二人が偶然にも特異体質だった、とか? 記憶が消えない人とか、いるだろ?」 「それは考えにくいわ。少なくとも、私が学生だった頃に受けた記憶力テストの結果はある。多少の忘却はあったわ。あなたのデーターはないけれど……似たような物でしょうね」 「そんな……」  海馬は落ち着かないように辺りを見回し、ため息をつく。
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