第1章

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「納得いかない……」  メガネをかけ白衣を着た女性が、白昼の喫茶店で呟いた。 「どうかしたんですか?」  喫茶店の店員が聞く。 「いえ……大した事じゃないわ」 「はあ」 「治験でも受けてたのかしら? だけど三年は長すぎるし、何より記憶がないってのが……」  ぶつぶつ呟いていたが、店員が心配そうに見ているのに気付いたのか、笑顔で言いつくろう。 「ごめんなさい。私、ノンレムワームに感染していたらしくて、少し記憶が戻ってこないのよ……」 「そうなんですか。いえ、自分もね、この前、退院したばかりで……。なんか、ノンレムワーム最後の被害者、みたいに言われてたんですだけど」 「へぇ。奇遇ね。あなたもなの……」 「あ、コーヒーどうぞ」  店員は、コーヒーカップを置き、ソーサーに角砂糖二つを乗せる。 「あれ?」 「え? 違いましたか?」 「いえ……。でも、頼んだわけでもないのに」 「サービスですよ、たぶん」  店員は言うが、どうしてそうしたのか、自分でも良くわかっていないようだった。  女性も何か納得いかないようにコーヒーを飲む。 「もう行かなくちゃ……でも、また来てもいいかしら?」 「当然です。いつでも歓迎しますよ」
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