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不貞腐れるカオルの反応を当たり前だと思いつつ、折れるわけにもいかない。
だって、アレだそ!?
ヤッただの、ヤッてないだの、
もーオジサン見てられまセン。
気まずい空気の中、車を出そうとしていたらポケットで携帯が振動する気配がした。
サイドブレーキを解除しようとしていた動きを一旦止め、ディスプレイを確認すると。
『柴田』
見えない敵に心臓がダッ、と跳ねた。
「悪い」
一言カオルに断り、車外へ出てから通話を開始する。
「よぉ」
平静を装って発した一言が震えていなかったことに安堵した。
のに。
『あ、冴島??今羽村と一緒?』
「────は?」
カラッと笑いながら俺を呼び捨てる柴田の声はいつもと何ら変わりなく、構えていた俺は思考が停止してしまった。
『や、羽村の携帯、電源落ちてるみたいでさ、連絡つかねーから。
伝言頼みたいんだけど!』
まるで何事もなかったような口ぶりに困惑する。
「柴田、お前昨日………」
『へ?昨日?
なんかあったっけ?』
「…………」
本当に何も知らないかのようにすっとぼける柴田に返す言葉が見つからない。
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