第1章

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『うはは! 勘違いすんなよ、オッサン!』 沈黙が支配していた通信電波を、柴田独特な音調が破壊する。   『言わなかった? もし羽村が自分から俺のところに来たときは、遠慮しないって!』 ポケットからタバコを取り出し、火を付けながら運転席側の窓からカオルを覗く。 目が合うと、不機嫌そうに唇が尖っていて。 ひとまず、ベェ! 先程のカオルを見習い舌を大きく出す。 そんな俺が意外だったんだろう。 むう!と眉間にシワを寄せたカオルが顔をクチャクチャにして、俺の半分ほどしかないような淡い朱の舌を突き出してきた。 肺に送り込んだ最初の紫煙を空に溶かしながら、こんなタイミングなのに愛しさが込み上げてくる。 ………いや、むしろ 『こんなタイミングだからこそ』 なのかもしれない。 感情のまま。 思うまま。 そのままを表現してくれることが特権だと、酔っていたい。 『なに笑ってんだよ』 こっちの様子がわからない柴田が、自分の言葉で俺が吹いたと思ったようで、少しムッとした声を出した。 誤解だけど、この際ちょうどいい。 「別に。よく喋るなと思って」 『なっ………!!』
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