第1章

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「お前は、間違いなくいいオトコだよ」 当に繋がりをなくした携帯に一人ごちて、ポケットにしまった。 運転席のドアをあけ、短くなったタバコを灰皿に押し付けていると 「柴田君ですか?」 とカオルが尋ねてきた。 「なんで?」 「先生、ものすごく意地悪に笑ってたから」 「………」 「ふふ、本当に仲良しですね」 その言葉をなんの疑いもなく吐けるお前が信じられないわ。 心の中で毒づいて車に乗り込む。 「柴田から伝言。 明日英語のノート、コピらせてって」 「英語? 変なの、柴田君英語得意なのに」 「へー。意外」 「小学校の低学年まで、ご両親と海外住んでたって」 なるほど、さすが音楽家の息子。 「ま、いっか。英語は毎日あるし」 「世界史は?」 「え?えっと………月曜日はないです」 にこり、微笑むカオル。 本当は、その世界史のノートなんだけどね、柴田が欲しいのは。 地味な嫌がらせをして、ちいさく舌を出した。 明日が楽しみだ。 「………なんか企んでません?」 「マサカ!」 最近鋭くなったカオルに、しれ、と答えた。
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