283人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前は、間違いなくいいオトコだよ」
当に繋がりをなくした携帯に一人ごちて、ポケットにしまった。
運転席のドアをあけ、短くなったタバコを灰皿に押し付けていると
「柴田君ですか?」
とカオルが尋ねてきた。
「なんで?」
「先生、ものすごく意地悪に笑ってたから」
「………」
「ふふ、本当に仲良しですね」
その言葉をなんの疑いもなく吐けるお前が信じられないわ。
心の中で毒づいて車に乗り込む。
「柴田から伝言。
明日英語のノート、コピらせてって」
「英語?
変なの、柴田君英語得意なのに」
「へー。意外」
「小学校の低学年まで、ご両親と海外住んでたって」
なるほど、さすが音楽家の息子。
「ま、いっか。英語は毎日あるし」
「世界史は?」
「え?えっと………月曜日はないです」
にこり、微笑むカオル。
本当は、その世界史のノートなんだけどね、柴田が欲しいのは。
地味な嫌がらせをして、ちいさく舌を出した。
明日が楽しみだ。
「………なんか企んでません?」
「マサカ!」
最近鋭くなったカオルに、しれ、と答えた。
最初のコメントを投稿しよう!