第1章

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「………カオル」 「はい?」 柴田のこと、どう思ってる? 聞きたい一言が喉に張り付いて苦い。 ギアチェンジして動き出した車を操りながら言葉が続かない。 「………」 「………先生?」 「………」 「………あの、いいですよ?」 黙ったままの俺を訝しげに見つめるカオルと、横目で一瞬だけ視線を交わす。 「なにが?」 「あげます、先生に」 「………なにを?」 「その猫の携帯ストラップ」 「………」 ポケットからはみ出し揺れるストラップを指差すカオル。 全く意に介していなかったズレズレの視点に、言葉を失った。 ────カオル、なんでそうなる? 「くふふっ!やっぱりー!」 無言の意味を取り違えたカオルが、手のひらを口元で合わせて破願した。 「そんな気がしてたんです。 先生猫ちゃん派だったんですねっ」 赤信号で停止した車内でカオルに呆れ顔を向けてみたけれど。 盛大な勘違いを打ち上げて勝ち誇ったように笑う姿に、完敗。 前言撤回。 鋭くなんてない。 やっぱりこいつは、 例えようのないくらい、天才だ。
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