第1章

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ふ、と笑みを逃して 「バレましたか?」 と、問うてみれば。 「バレバレですっ!!」 上機嫌な笑顔が返された。 「じゃ、遠慮なくいただきましょうかネェ」 俺の言葉にぱあっと、一段と大きな花が咲いた。 「お詫びに」 青信号に切り替わったのを確認して、アクセルを緩やかに踏む。 「夏休み、ストラップ買いに行きますカ? 俺の地元である夏祭りセットで」 「!!!!!!」 隣で大きく身を打つカオルに頬が緩む。 視線はあくまで前を見据えながら、左手でカオルの手を探る。 予想通りの位置にあったそれを、掬い上げた。 「ホタル、終わってたからその埋め合わせも兼ねて。 ドーデスカ」 「………」 きゅう、と握り返される温かな手のひらから答えは伝わってくるけれど。 「行くの、行かないの」 「い、行くっ!!!」 頬を上気させたカオルが視界の端に入り、込み上げるいとおしさが隠しきれず吹き出してしまった。 「じゃ、まずは目の前のテスト、やっつけましょうかネー」 「はいっ!!」 両足をジタバタ忙しなく動かして喜びを表現するカオルに、胸の芯から湧き出たオレンジ色が全身を包んでいく気がする。
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