第1章

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俺はきっとこれからもこの笑顔が、この嬉しそうな姿が見たくて右往左往するのだろう。 手を延べられない日もあるだろうし、大人だからこそ、さらけ出せない本音もある。 泣かせたくないのに、守りたいのに側にいられないことの方が多い現実。 その度に罪を重ねているような感覚が全身に刻み込まれる。 だけど。 「先生っ!」 「ナンデスカ」 「いつもありがと! 大好き!!」 事故ってしまいそうな衝動。 興奮して無邪気に発せられた言葉はきっと本人は自覚もないんだろうけど。 そんな掛け値なしの本音に、 いつもいつも。 心揺れ。 心痛み。 俺の鈍った感度や腐った神経を、容赦なく刺激する。 カオルが何を考えているのか、俺が高校生だったらもっと解ってやれたのか。 そう思って参加した同窓会のはずだったけれど。 ────違う。 俺が高校生でもきっと、カオルに夢中で、狂って。 そして同じことを悩んだんだと思う。 「先生!」 「ハァイ」 「大好き………です、よ?」 ちょっと甘えた、ねだるような音。 ────きっと、今だから。 そう。 今だからなんだ。 「────俺も」 小さく華奢な手のひらを開き、指と指を絡ませながら。 初めて本気で手離したくないと思えた体温を、強く強く感じていた。 判ってることは、ただひとつ。 俺の憂鬱は。 重くて深くて、何よりも甘ったるいようだ。 《ひとまず、完》
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