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俺は拳を握ってジッと李煌さんを見据えた。
――今度は逃がさない。
俺の強い視線に李煌さんが顔色を変えた。
「…大河…くん?」
「俺が前言った事は、冗談とかじゃないから」
「え……?」
「このまま何もなかったことにされたくないから、一応言っておくけど…。俺は李煌さんのことが好きだから、兄として見ることはできないし、したくない」
息を飲む李煌さんの顔が真っ赤で、少しニヤケたくなった。
俺の言葉で照れてくれているなら、やっぱり嬉しい。
「それと、さっきの質問だけど。俺の部屋を出て行く時の李煌さん、全然笑えてなかったよ。俺には複雑そうな顔に見えたから、誤解してなかったとしても嫌な気持ちになったんじゃないかって、俺は少し期待した」
「……」
「違う?」
グッと固唾をのむ李煌さんに、俺は確信を得た。
しかし、ここで強引に攻めることはしない。
出来るだけ時間をかけて、
李煌さんの気持ちを引き出したい。
(ここでしくじったら、前と同じだからな)
俺はジッと李煌さんが喋ってくれるのを待った。
「……一つ、訊いてもいいかな」
李煌さんの震えた声が届いた。
「うん。いいよ」
「え、っと……。て、手紙……」
「手紙?」
「…うんっ。テスト前に、…ラブレター、貰ったって言ってたじゃない……?」
尻すぼみになる言葉を俺は零さず拾って行く。
「うん。貰った」
「……そ、れで……」
続きを紡ぐのが気まずいのか、下唇を噛む李煌さん。
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