一章

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「はい、如月です。どうしたんですか、赤石刑事」 画面を見なくとも緊急連絡の相手は直ぐに想像がつく。 「桃魔? 今、どこ?」 「白壁駅近くのバス停です。これから家に帰ります」 「白壁駅? そこに居てくれ。五分で着く」 「雨が降っていますけれど」 桃魔が返事をする前に携帯は途切れた。 携帯画面に雨粒がつく。桃磨はハンカチで画面を拭いた。買ったばかりの新品だ。防水加工はしてあったが、電池が水濡れては叶わない。 桃磨は傘を挿し直す。携帯は学生鞄に入れた。梅雨は桃魔の好きな季節だ。短い間に雨は幾つもの形を変えていく。細い銀糸が、アスファルトに染みていく。
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