一章

4/12
前へ
/452ページ
次へ
交通量の多い時刻だ。もうじき暗くなる。桃磨の前を車のヘッドライトが通りすぎていく。軽快な流れだ。川の流れに似ている。 桃磨が着ているワイシャツもズボンも湿り気を帯びていた。通学鞄も雨に濡れている。 バスを待ち続けて十分は経っている。 都心のくせにバスの本数が少ないことが面倒だった。 晴れていれば歩く。雨ならバスを待つ。自転車も考えたが、学校は少し遠い。天候のことを考えると草食系の桃磨にはきつい。 それだからこそのバスと地下鉄を使った通学だった。
/452ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加