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お坊様に続くようにブクブクと泡を吹いて倒れていく、親族がドミノ倒しに倒れていき。
シャンッ!! シャンッ!! シャンッ!! と、鈴の音が鳴り響き、開いていた襖がピシャンッと閉まる。親族の一人が襖に近寄り開けようとするが、どこからか鋭い声が響き、
「開けるなっ!! おかしな者を招き寄せるつもりか。じきに治まる。ヤバいのはおかしな者に死体を奪われることだ。絶対に開けるな!!」
と言ったのはお兄さんだった。ブクブクと泡を吹いて倒れる参列者達を押しのけて、お坊様を蹴り飛ばして、どかりと座るとお経を唱え始めたのだ。その姿はお坊様と遜色なくて、むしろ、若いからこそ力強さがあった。
誰もが息をのむ中でお兄さんの読経が響く、シャンッ、シャンッシャンッと鈴の音が響く。その音が襖の向こう側から聞こえていたのに何人、気がついただろう。私は恐ろしくなり、今すぐに出て行きたいと思ったけれど、襖の向こうにいる得体の知れない何かわからない恐怖があって出て行くことはできない。
シャンッ!! シャンッ!! シャンッ!! ガリッ!! ガリッガリッガリッガリッガリッガリッ!! 襖を爪で削るような音がして、参列者の何人かが驚いて耳を塞いでうずくまった。
お兄さんの読経が続き、汗をかいたのか顔をびっしょりしながらそれでも途切れることなく続いた。鈴と爪の音は絶えず続いていき。
私は襖に開いた穴があることに気がついた。
そこから覗いていた黄色い瞳とゾリゾリと穴を広げようとする爪、私は恐ろしくでも、目をそらすことができないけれど、あれをここに入れてはいけないと思ったが、身体が動かない。射止められたように身動きがとれないのだ。
その時、背後からそっと両手が顔を覆った、驚いたが、
「大丈夫。落ち着いて、ゆっくり数を数えよう。君はここにいるし、君の居場所はここだ。何者にも奪われたりはしないよ。大丈夫。大丈夫。いち、にぃ、さん」
と、その声が聞こえ、私がゆっくりと数を数え、そしてその手がゆっくりと放された。
そして、私はある者を見た。
それは祖母の棺からふーっと煙のような者が登っていく。それに合わせてシャンッ!! シャンッシャンッシャンッシャンッシャンと鈴の音が響く。お兄さんの読経もそれに合わせるように強くなる。
襖に開いた穴の向こうで、悔しそうな唸り声が聞こえたりして、
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