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「あの、貴方は…」
「あー、申し訳ない!自己紹介もまだだった。僕は六階の敦士だよ、ここに来て五年かな、今は15歳。君は何歳?」
どうしよう、自分の歳なんてわからない。
「わ…わかんないんです、変ですよね、こんなの…」
するとあははと敦士さんは笑った。
「そんな子たくさんいるよ、特に赤ん坊から虐待されてた子なんてさ、でも見たところ、十歳くらいじゃない?」
「あ、多分…」
「歳なんてどうでもいいんだよ!で、何で公園にきたの?」
「あ…昔、凄く昔に本当のお父さんと公園で遊んだ記憶があって…ちょっと気になって…」
敦士は少し考えながら
「…そうか!色んな遊具あるし、楽しんで!あ、僕は子供たちとまた遊ぶから」
「あ、敦士さん…は面倒見がいいんですね」
すると、敦士さんは少し真面目な顔になった。
「んー、実を言うとね、僕は保育士さんになりたいんだ、勉強会でも
保育士の勉強している。子供が心から楽しんで幸せになるなら何でもしたいんだよね」
凄く、心に響いた。
こんな考え方をする人もいるなんて…自分だって辛い思いをしてここに来ているのに、他人の幸せを願えるなんて。
「凄いです、絶対、敦士さんならなれます!」
敦士さんは少しびっしりした顔をしながら、ありがとうと笑ってくれた。
敦士さんが子供たちの所に帰ると、僕はブランコをした。
僕の本当のお父さんがしてくれたように、後ろから支えられてる感覚で…。
涙が途中流れそうだったが、我慢した。
お父さんは僕を愛していたのだろうか。
今何処で何をしているんだろう。
新しいお父さん、怖かったよお父さん。助けて欲しかったよお父さん。お父さんお父さん。
ブランコを降りると、切ない気持ちのまま公園をあとにした。
敦士さんは両手の指が全部なかった。
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