悪魔

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酷く苛々する。 新しく入った少年を見た後からだ。 爛れた肌、でもその他の身体は真っ白で、真ん中分けした肩までの黒髪。 大きな瞳と鈴のなるような声。 なんだあいつは、なんなんだ。 一目みて、これ以上関わってはいけないと思ったのだ。 あぁ、そういえば華との約束を忘れていた。でもいい。今はどうでもいい。 華は俺を選ぶ程欲求不満なのか。馬鹿だなあいつは。本当はあいつに抱かれたいくせに。 とりあえず何も考えないように、授業に参加することにした。 「久々だね、悪魔」 話しかけてきたのはこの施設の学校で一番頭のいいと噂の彼方(かなた)だった。歳は19。この男しかいない施設の中で、モテる程はなかなかのイケメンだと思う。 「まぁ、時には」 自分でも思うほど素っ気ない返事だ。 「そういや、新しい子が来たんだろ?どうだい?」 ! そうだ、思い出したくなかった。 俺が無言でいると、彼方は悟ったように、もう何も言わなかった。 「苛々するんだ」 「苛々?」 「顔を見てると腹が立ってくる、なんで」 「なんでこんな子が虐待されてたなんて…ってことかい?」 俺の言葉を被せるように、的確に俺の気持ちを汲んでくれた。 「悪魔は素直じゃないなぁ、まぁ、自分のことしか考えなかった悪魔かが少し成長したとか?」 ニヤニヤして話しかけてくる彼方がうざったらしくて、席を立った。 「好きなの?」 「んなわけないだろ、ガキだぞ」 「ふーん」 納得いかない顔をしながら、あっそっと彼方は次の授業の準備をした。 「あ、そうだ!」 彼方は振り返り、 「憎いってことは愛と対等してるんだよ」 笑いながら教室を後にした。 その言葉に、更に苛々し、机を殴った。 ここに何年もいるが、虐待は減るどころか増している。 最初500人だったここが、今は800人、これから更に増えるだろう。 まぁ、1000人収容するつもりで建てた施設だから余裕で場所なんかあるんだけども。 色んなやつがいる。 信也のように馬鹿五月蝿いやつ。 秋のように見た目に反して大人なやつ。 雫のようにニコニコしてるやつ。 そして ここが、どういうところか理解しようと頑張っているやつ。 皆心に傷をおっている。 その為の施設なんだけれど。 そう、こうして増え続ける虐待被害者がここに来るたび、悔しくて儚くなるのだ。 俺は何もできないのに。
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