第5章 恐くても、怖くても、会いたい。

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 現状では、母さんが毎日三食食事を作りぼくに供えるがてら話かけてくれているし、抱や想も毎朝学校へ行く前に挨拶をしてくれる。そのことについては、形も姿勢も示すことが出来ないが、本当に感謝している。ありがたく感じている。  だが、それもやがてなくなっていくことを考えると、抱も想も来てくれなくなることを考えると、今してくれている行動の全てが、無意味なものに思えてくるのだ。  忘れない努力は、きっとみんなしている。ぼくもじいちゃんが死んだ時はすごく悲しかったし、死んだからと言ってじいちゃんの存在がなくなったことにはならないから、忘れることはないと思っていた。  でも、思い出す機会は、格段に減ってくる。それこそ、墓参りの時とか、ふとばあちゃん家にある仏壇を見た時にいたなとか、機会がないと思い出せなくなってくる。  例えそれまで、毎日会っていたとしても。例えそれまで、どんなに大切に思っていたとしても。  想のお母さんの時も同じだった。  死ぬとは、各々の日常から消え去ること。忘れられはしないかもしれないけど、当たり前から、消え去ってしまうこと。
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