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さて、そんな私だが、最近抜け毛で悩んでいるんだ。
櫛でとかしたら、毛がわしゃわしゃ釣れる。
なんだか、自分の未来を母ちゃんに見てしまっているようでとっても怖いぞ。
それで、会社での健康診断……
そこの問診で先生に抜け毛の相談をしようと思ったんだ。
名前を呼ばれ、保健室にあるような衝立を潜り抜けた私の視界に問診の先生が映った。
蛍光灯の明かりの下、
ツルッツルで、ピカピカ照り返しているさまが、
やけに神々しく見えたんだ。
『何か最近、体のことについて変わったことはありますか?』
これは……試練か!?
完璧なハゲの先生相手に、
『最近抜け毛がすごくて困ってるんです』
これ、言えるか!?
人として言っていいレベルか……!!!?
Σ(O□O;)
数秒間迷ったあげく、何かの大病とか潜んでいたらあれなので相談することにしました。
『最近、毛がわしゃわしゃ抜けるんです。
こうやって手櫛を通して引っ張ると――――』
私はいつものように毛を梳きました。
ところが、なんということでしょう。
こんな時に限って!
毛が抜けません……っ!!
これでは私はこの問診をしてくださる先生に嫌がらせをしているとしか思われないでしょう!
だめ、そんな失礼すぎる!
抜けろ、抜けろ私の毛根!!
今だけでいい、全身全霊を持って抜けろ!!!!
呪詛のように心に吐き出した私は、思いっきり手櫛を引っ掴み、一気に引っ張りました。
――――ブチブチブチブチィ!
涙目になるくらいの衝撃が頭皮と私の心に走り抜けました。
私は一体、何がしたかったんだろう。
むなしさだけが心を満たして行きます。
その瞬間、なぜか私はそんな自分に禿げきゅんを感じていたことに気付いたんです……。
私のきゅんポイントが人と違うってことはわかってるんだ。
でもさ、このイベントは……(以下略)
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