ドライブ

2/9
前へ
/11ページ
次へ
入学して3ヶ月。 何とか大学生活にも慣れ始めた7月上旬、俺は登校して早々じめじめした嫌な暑さに苛々しながら、クーラーの効いた食堂に滑り込んだ。 汗と共に火照った体を冷気に冷やされていくのを感じて、ようやくほっと息を吐くと、朝から何も食ってないためグーグー主張してくる腹を抱えて食券機の前でちょっと悩む。 結局無難に夏野菜カレーを選び、手近の空いていた席に腰を下ろした。 スマホでLINEをチェックしながら、野菜のゴロゴロ入ったカレーをかきこんでいると、カタン、と空いていた向いの席にきつねうどんの乗ったトレーが置かれた。 おいおい了承もしてないのに相席かよ、とスマホから顔を上げて相手を確認すると、思わず「げっ」と声が漏れた。 「由良(ゆら)…」 にっこり。 そうとしか形容できない表情に、顔を顰める。 こいつのこの顔は……。 カレーが半分以上残っているのも構わず席を立とうと腰を上げかけるが、グイッと机に付いていた腕を引かれてバランスを崩してしまう。 「っ! …んのヤロ、危ねぇだろうがっ」 「1人なの珍しーな、斎藤」 人の話聞けやこの野郎…! 慌ててもう片方の手を付いてカレーに顔面ダイブするのを免れた俺は、目の前のまるで反省の色ゼロな男を睨みつけた。 しかし俺の睨みなんぞ何のその、由良は掴んでいた俺の手をグイグイ引いて、無理やりに俺を席に着かせた。 「くそっ、最悪だ……」 「ハハッ、酷くね? 斎藤1人ぼっちだったから声かけてあげたのにさ~」 不機嫌そうな俺に、何が楽しいのか由良はニコニコと笑ってる。 いや……コイツはいつもこんなもんか。 というか。 「誰も頼んでねぇよ…。つーかそもそもお前だって一人だろーが」 「まぁーねー」 「そんで好い加減キモいから手ぇ離せ」 「逃げないならね」 何を言ってもニコニコニコニコ。 鉄壁の笑顔で跳ね返される。 こういう時のコイツは、かなり”機嫌がいい”。 由良のその様子に、これはマジでヤバイ…と俺が冷や汗をかき表情を引き攣らせ始めた頃、ヤツは唐突に言った。 「ドライブ行かない?」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加