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その日から、禿げの話題も少なめに交流を深めていたある日。
先輩の一人が頭に十円禿げを作り、皆に弄られているのを目撃。
というわけではなく。
先輩は当時、地元が同じで俺をコキ使っていたんだが、部活動の後輩である俺に部活動後、マッサージをするように言っていた。
それをこれまでのようにこなしていると、気付いてしまうわけだ。
これまではうまく隠せても、習慣や後頭部は隠せないって。
先輩の十円禿げに気付くと、これまで苦痛でしかなかったマッサージが癒しの時間に変わっていた。
それから毎日、先輩のマッサージを行い禿げを眺めては、笑顔で先輩に接する。
少しずつ、歩み寄る。
禿げに。
それを見て、俺の心は癒される。
でも、哀れむ時間も、哀しむ時間も有限だった。
時は流れて、禿げは治るもの。
と、知る。先輩は怪我で禿げたのだと知る。それは時間が解決してしまうのだと、知る。
先輩、どうして俺の顔を見て笑うんですか?
どうして、そんなに嬉しそうなんですか?
どうして……
恥ずかしがりながら、告白してくるんですか?
そんな先輩に俺は言いました。
『俺もいつか禿げるらしいので、禿げてる現状の人には微笑むようにしてるだけですよ』とは言えず。
「え、いやきっと弄られるのも嫌だろうから、ほらそれに後輩の俺が生意気言うのも悪いじゃないですか」
と照れながら返した。
内容がおかしくても、態度と慌て具合で良い方向に勘違いしてくれました。
そんな俺の内心ですが
正直……嫌がってます。
俺は独り善がりの同情と
人一倍の、嫌悪を持ってます。
そうです。
これは「軽蔑」だ。
禿げを軽蔑視してるんだ。
そこから、哀れんで同情してるのか。
俺も、禿げれたら何かが変わるのかな。
俺と先輩の仲はきっと、禿げなければ始まらない。
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