第1章

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「レイゼ頑張って!!」  必死に私を引っ張る母の顔が私の脳裏に映りだされる。 「はぁはぁママ、パパは?」 「……」  私は何度も同じ質問をしても母は何も答えてはくれない。   しばらく走り続け、ようやく二人で入り込んだ小屋、やっとの思いで逃げ込んだ小屋で私達を迎えてくれたのは見覚えのある人だった。 「シンフィア様! レイゼ様! ご無事でしたか」   父の仕事仲間のカイル・ルーカスさん、父とは学生の頃からの親友で私ともよく遊んでくれた大切な人。 「ひとまず此処まで逃げれば大丈夫でしょう……ですが、サースは……もう」  カイルさんの言葉に母はその場で泣き崩れる、だけど私には何でこんな事になってしまったのか。 それすらも理解できず、ただその時の私の目を引いたのは傷だらけでその場に立つカイルさんの姿だけだった。 「シンフィア様、今は騒ぎが落ち着くまで無事に逃げ切ることを考え下さい、そしてレイゼ様! アナタには御伝えしなければいけない事があります……レイゼ様の父上サース様は――」  私の人生が大きく変わった日、私には新しい目標の出来る日でもあった。  「みんな、おはようございます、今日は選考授業の日なので一日この教室ではなく別教室になるので、みんな移動してくださ?い」    朝から早々と移動を始め各教室へと向かって行くクラスメイト達だが、そんな中で俺にはどうしても気になってしまう光景に目を向けている時、俺に声を掛けてくる奴が来た。 「どうしたんだよ甲斐? 早く行こうぜ」 「何だよコン、お前と俺じゃ教室が違うだろうが」 「そのニックネームで呼ぶのは止めろ!!」  入学早々弄られキャラへと導かれたコンラート・ゾイゼンホーフェル、昨日寮に付いた俺は同居人がこいつだと知らされ、最初は会ったばかりで全く喋れなかったが、数時間の内に今の状態になるほど打ち解けられた。 「わかったわかった、アレだよアレ」  何度誤魔化しても聞いてくるコンに面倒臭がりながらも、俺の見ていた者を教えた。 「うん? アレって……何だ魔族の集まりじゃ無いか、アレがどうかしたのか?」 「いや、何でアイツらあんなに後ろを歩いてるのかなって、思ってさ」  最後尾で集団を組む魔族の集まりに対して持った疑問だったが、コンは溜め息を一つ吐き、俺に説明し始める。  
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