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『亡名制度』というもの出来てからの歴史は浅い。
この制度はその名の通り、名前を亡くすものである。
近年、人類に起きた突然変異がこの制度の誕生に起因していた。
その変異とは、感情の欠落、身体能力の向上、身体の変態、稀なケースとしては人間の形を失い、全く別の生物に変貌を遂げたものも存在している。
発見当初こそ、人類の『進化』と称えられたり、人類の『可能性』として注目を集めていた。
しかし、研究が進むに連れ、それらの評価は瓦解し、人類として望まれない存在へと化していく。
政府によって、この変異を遂げた者を『非望的進化症』と呼ぶことが認定され、更に症状の進行具合によってレベルも設けられた。
レベルは三段階に分かれ、比較的軽症な者をブルー、重症な者をレッド、レッドにいずれ到達するであろう者をイエローと断定した。
非望的進化症に急性は存在していない。
慢性的に人体を改変し、『進化』を遂げていく。
患者の体内には未知な細胞が発見されており、それが原因と推測されているが、真実は未だに明らかとなっていない。
しかし、政府はそれを原因と断定し、その細胞が発見された者全てを非望的進化症患者とした。
その決定に遺憾を持った患者達は、怒りに任せた反乱を巻き起こす。
その中には実際に非望的進化症の人間も存在しており、その戦禍は壮絶なものとなった。
人類は科学の力を以てそれに対抗、やがて勝利を納める。
その際に設立された組織が『化捜隊』、通称『白服』である。
彼等は非望的進化症の人間を殺戮するための装備を持ち、科学の力でそれらを殲滅していった。
政府はこれらの争乱から、非望的進化症患者の危険性を世間に発表し、対応を新たに設けることを決定。
それは非望的進化症患者のレベルレッドに到達した患者の名を削除し、人類として扱わないというものだった。
名を奪われた者は強制的に専用の留置所へ送られ、やがて『火葬場』と名付けられた専用の処理場にて火葬される。
これが『亡名制度』である。
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