それは、いて欲しいから

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「今夜は、美琴のお願いを断ったお詫びに他のお願いを何でもきくよ。」 チュッと手の甲にキスをする恵は、王子様のように膝まづいて私を見上げた。 身体が不自由になっても面倒みると言われ、他に何がいえるだろうか。 我が儘で自分勝手なお願いを断っても、何もお詫びなんて必要ないのに。 「恵・・・。」 「なに?」 「ぎゅうってして。」 「それは私がしたい事だよ、美琴。」 そう言いながら、嬉しそうに抱きしめてくれる恵が愛しい。 「他にお願いは?」 「恵のお嫁さんにして?」 「あー残念、それは無理。」 「え?」 「だって、もう美琴は私のお嫁さんだもん。」  「・・・・恵・・。」 「ほら、他には?」 「・・恵の作ったご飯が食べたい。」 「ふふ、もう出来てるよ。」 「じゃあじゃあ、今度お揃いの指輪かお?」 「うん、いいね。買いに行こう。じゃ、続きのお願いは食後にね。」 「食後?」 「うん、ベッドの上で。」 あぁ、これはもう今夜は眠れそうにない。 期待で喜ぶ心と身体が、恵にピタリと密着して離れれなかった。
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