138人が本棚に入れています
本棚に追加
「良かったら、お茶でもどうですか?これもご縁かもしれないですし。近くに行きつけがあるんです。」
これが異性からであれば、きっぱり断れるが、同性であれば警戒心はかなりひくい。
気分転換にもなればと思い、すたすたと彼女の後を歩いた。
行きつけのお店と言うのは、本当に近くで、レトロな喫茶店だった。
おすすめという珈琲を頼み、話題はやはり仕事の事に。
「いい仕事、ありましたか?」
「それが、よく分からなくて。何をずっと仕事として続けていいのか。あなたは、あ、名前まだでしたね。」
そこでまだ自己紹介がまだだった事に気付き、慌てて名前を名乗ると、彼女は武邦薫とこたえた。
「薫さんは、何をされてるんですか?」
「私は、実はまだ学生で。今年、大学卒業なんです。あと、さん付けはいいですよ。私、年下ですし。」
妹がいたら、こんな感じだろうか。
大学生なのに、落ち着いた雰囲気の薫に感心しながら、雑談を楽しんでいた。
が、少し長くなってしまったのか、いつのまにか夕方になっていた。
暗くなったな、と表通りを見ると、携帯を片手にいそいそと帰っている椎名の姿をみた。
あっ!と、思うと、こちらに気づいたのか、椎名と目が合い、手を振りながら近寄ってきた。
「お知り合いですか?」
「うん。ルームシェアしてる子でね。」
「へー。」
観察するように椎名を見ると、お店に入ってきた。
「お疲れ様。仕事終わったの?」
「ええ。そちらは?」
「えーと、こちらは、最近知り合いになった、武邦薫さん。薫さん、こちらはさっき話した、ルームシェアしてる椎名美琴さん。」
二人とも、説明しにくい!!
と、思いながら紹介を済ますと、何故かうすら寒い雰囲気が漂った。
最初のコメントを投稿しよう!