第1章

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別に何をしたわけでもないのに、昔から悪い噂がいつも付きまとっていた。 人の彼氏を寝とったや、不倫しているや、小学生の時から援助交際していたやら すべてただの噂 それもすべて、自分の派手顔と親の水商売が原因 寄ってくるのは、下心丸出しの男とヤンキー下がりの女達 誰も私が緑茶と最中を食べながら、ニードルで人形を作るのが好きなんて、知らない 友達なんていなかった でも唯一、私に何の先入観もなく話しかけてくれる人がいた 同性の1つ上の先輩 おはよう さようなら こんにちは たんなる挨拶 でも、私にしてみればそれは当たり前だけど当たり前でない特別な言葉 だから、思いきって卒業式にボタンが欲しいと頼んでみた それがあれば、これからも頑張れそうな気がしたから 先輩は少し驚いたような顔をしたが、勢いよく一番心臓に近いボタンをちぎり、そっと渡してくれた 「また、会えたらいいね。」 ふわっと優しい笑顔とその台詞は、私の心を初めて熱くさせた。
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