それは、いて欲しいから

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「おかえりー、美琴。」 いそいそと帰ってきた恋人を玄関で迎え入れ、そのままお風呂へ誘導していく。 いつもは美琴が脱がしたがるが、今日は反対。 焦らすようにキスをしながら脱がし、シャワーをかける。 「軽くシャワー浴びて、まずはお湯に浸かろうね。」 マッサージをするように全身に手を這わし、指先に口付ける。 「これは、朝の返事?」 「違うよー。美琴を愛してるって表現。」 「・・もっと欲しい・・。」 「うん、もっとあげる。」 いつもよりも倍以上お風呂のタイムを堪能し、お風呂上がりにコラーゲンドリンクを渡した。 その間、ドライヤーで髪を乾かす。 「ねぇ美琴、今幸せ?」 「うん、凄く幸せ。」 髪を乾かされるのが好きな美琴はうっとりとした表情。 その顔が可愛くて柔らかくなった唇をはむっと咥える。 「私もだよ。だから今の仕事は辞めない。」 「・・・・・。」 「実は店長から正社員にならないかって言われててね。受けようと思ってる。」 悲しそうに顔を下にする美琴の顔を上げた。 「これで、美琴の事をもっと胸をはって彼女だって言える。美琴といれる時間がずっと幸せで、対等だと思えるようにさせて。ね。」 「ずっと、引け目に思ってたの?」 「私の気持ちの問題。もし美琴が車椅子になっても、目が見えなくなっても、生活出来る自信が欲しかったの。」 なでなで、と頬を撫で、美琴のこたえを待った。 これが私のこたえだから。
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