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「離さないで」
男はそれだけ言うと馬車の外の二人と反対側の扉を勢いよく蹴り飛ばし、伽耶あの手を引いて箱の外へ飛び出す。
伽耶も手を引かれた勢いで、外に飛び出し、足を縺れさせながら懸命についていく。
(……馬車の、ドア……!?)
「あっ!」
「嬢!」
そこで伽耶は漸く、これまで馬車の扉が一度も開けられていなかった事に気がつく。
背後に二人の声を聞きながら、脚に絡みつくワンピースを懸命に持ち上げながら。伽耶は懸命に男に問うた。
「ねえ待って!ちょっと待ってってば!」
「待たないよ」
「なら、どこへ行くのか教えて!?ねえっ!」
「伽耶の行きたい所に、連れていってあげる」
「……え……?」
「俺が、連れ出してあげる」
走りながら振り返った男は、やはり愉しそうに笑っていた。
二人は、深い緑の茂る森へ駆けていく。
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