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「外傷はない。だが、意識も戻らない。一時的に戻っても、意味のない事を叫ぶばかりらしい。
困り果てた王は遺跡の周辺を封鎖し、兵を常駐させている」
「…呪いの影響か、柱の軋みによる歪みの影響か。
少なくとも、風の魔法が強い場所に、精神魔法はそぐわない。トラップではないな」
アドルファスの言葉に、ユーリスも頷く。
風の魔法は移動や攻撃が多いが、精神に呼びかけるような魔法はほぼない。
精神の魔法を得意とするのは水の魔法か、呪いという負の方法だ。
「色々問題はあるけれど、まずはこの兵士をどかせなきゃ遺跡に近づけもしない。
ちなみに、俺がどんだけ頑張っても理由もなく遺跡の調査許可はおりないぞ。
俺は商人だからな」
「分かっています。
でも、こちらも今貴方に話した事を不用意に話すつもりはありません」
「だよな。思いっきり教会の教義に反する。下手すれば掴まって宗教裁判で火あぶりだ。そんなリスクは冒せない」
「と、なると」
「非合法な方法を取るしかないってことだろ?」
ホレスがニヤリと笑う。
ユーリスがホレスを頼ってここに来た理由が、アドルファスは分かった気がした。
この男なら、遊び半分にこういう危険を冒してくれるのだろう。
その見返りが何なのかは分からないが、協力するという事は何かしらある。
ユーリスは、ほどほど相手を見ているものだ。
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