第1章

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 ユーリスが暮らす国、聖ライラードから南西に、ザイル領という場所がある。  ライラードの属領であるが自治権を持ち、領主が管理している土地だ。  気候、治安共に落ち着いた場所であり、中規模な港もある為商業も発展し、賑わいがある。  その港から船で一時間程度の場所に、一つの離島があった。 「ユーリス様、本当にザイム領主に顔を出さずにおいてよいのか?」  目的地に到着した一行は、仮置きしている屋敷に入った。  それぞれが旅装を解いて一時寛ぐ。  その中で、ユーリスの従者兼護衛として同行している者の一言だ。 「グレン、今回はお忍びですから」 「とはいえ、何かあればここの人を巻き込む。お忍びなどと軽い調子の旅ではないと思うのだが」  意外と融通のきかない部分がある。  これが、今回の気心知れたメンバー(おまけ一)の、グレンという仲間への評価だ。  グレンはユーリスとは最も年が近く、軍事訓練なども一緒に組むことの多い青年だ。  白い針金のような頭髪に、青い鉢巻。瞳は氷のような色をしている。長身で細いが、筋肉質な体をしている。
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