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すずはその油絵に躊躇うように手を差し伸べていく
久我原はすずの様子を見て何か小さく呟くとすすが油絵に触れる前にさっとキャンバスを取り上げた
その絵は普段の久我原からは想像の出来ないほどの繊細さで優しいタッチで描かれていた。
どこかで見たような懐かしい風景……
すずは久我原の一連の動作を床にへばりこんだまま見あげていたが何か小さく囁いた
ここからは聞こえなかったがその言葉を聞いて久我原が明らかに驚き動揺を見せたのがわかった
このままこの場にいてはいけないと僕の中で警鐘がなった気がした
「すず!帰ろう」
僕はすずの腕を優しく引き上げ立たせるとすずの荷物を手にドアへ向かった
すずは何かに心を捕らわれた様で、ふらりと後を着いて来た
すずが何を呟いたのか、なぜ久我原が動揺したのか僕には見当もつかずただイライラだけが募っていった
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