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胸の中で空気が引っかかるような息遣い
喉元を通り過ぎる感覚から喘鳴が漏れ始めているに違いない
息苦しさから口元を抑え耐えきれずしゃがみこみ、籠巾着から吸入器を取り出そうと手を差し込んだ
その時、後ろから私に気づかずつまずく人
私もその衝撃に耐えられる体力もなくその場に倒れ込んだ
私の手からは吸入器が飛び出し転がった
手を伸ばしたがその先を歩く多くの足が吸入器を蹴り飛ばし私の視界から消えてしまった
絶体絶命…雨で遮られた視界をもさらにかすめ、声にならない声で叫んだ
「………て、……か……ケテ」
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