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保健室に向かいながら私は朝の光景を思い出した 見上げた先にいた朝陽は微笑みながら何かを呟いた 唇の形はゆっくりと確かに『お・い・で』と 私は保健室の前で立ち止まり躊躇った そして、ドアにかけた手をそっと外すと踵を返した 廊下を階段に向け歩き出す。 アダージョからアンダンテ、モデラート、プレストと速さを変え 美術準備室の前に着いた時には息が切れていた ドアの前で息を整えようと胸に手をあて大きく息を吸い込んだ 「ふふっ、廊下は走らないように」 「ケホケホ……」 大きく息を吸い込んだ瞬間後ろからかけられた声に咽る私の背中を、そっと撫でる大きな手が触れた .
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