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「だよな。 僕もビックリしたから理由が知りたかったんだ」 「で、なんだったの?」 「久我原は『落し物を届けてくださっただけだよ』って言ってたけどな……」 さくちゃんはそれだけじゃないと思っていることがその様子を見てわかる 「………しばらくフランスへ行くから僕にクロシェットを預かって欲しいって」 自分のことを呼ばれたと思ったのかクロシェットはチラリとさくちゃんを振り返った が、また私の膝の上で丸まって微睡み始めた 「訳わかんないだろ?! 僕をバカにしてんのかと思ったくらいだよ」 「さくちゃんは………知ってたんだ」 私は朝陽がフランスへ行くことを、行ったことを知らなかった なのにさくちゃんは知っていた そのことが余計に寂しさを増していった 寂しさが先立ってさくちゃんが言葉を飲み込み目を細めたことに気がつかなかった .
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