- 44 -  朔夜side

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僕は遠ざかるおばさんをただ呆然と眺めていた 「まいったなぁ」 振り返り近づく久我原が僕にそう声をかけてやっと僕の時間が流れ出した 「どうして先生が」 「わりぃ、俺風邪引いてるから家でも良いか?」 そう言うと親指でクイッと自分の後ろ方向を差しながら『あっち』と僕を促した 僕が後をついてくるのを確認しながら前を歩く久我原は、時折咳をしながら肩をすぼめていた マンションの一室の前に立つと鍵を開け 「入って」と僕を招き入れる 玄関を上がるとすぐの部屋には画材やらキャンバスが所狭しと置かれ、どうやらアトリエになっているらしかった そして、久我原あとをついていくとこざっぱりしたシックなリビングが広がった .
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