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「え…」
「青菜に負けるんじゃないか、そう思ってるんだろ?」
明日香の表情が硬くなるのを感じる。俺を見ていた明日香だったが、直ぐに目をそらした。
「絶対的に勝てるはずなのに、どうしてか不安が残る…。だから、俺に青菜を明日、婚約者として発表しないようにと言いに来た。そうだろ?」
明日香は黙ったまま。
俺はそのまま話を続ける。
「まぁ、明日香が言ってることは正しいよ。青菜にそんな事をさせて恥をかかせることはないって…。負けることはないって…」
俺は少し笑って言う。
「でもな、俺は信じてるんだ。不思議と分からないけど、アイツなら組のみんな認めるんじゃないかって…」
明日香は黙ったまま俺の話を聞いて、スッと立ち上がった。
「悠紀、あなた変わったね…
。信じるなんて言葉使う様になったなんて…」
それだけ…
青菜ちゃんの存在が悠紀にとって大きいなんて…
今までずっと小さい頃から悠紀だけを想ってきた。
ぶっきらぼうだけど優しくて、強くて…
『明日香ちゃんは悠紀くんとお似合いだね!』
『明日香は悠紀とお似合いだよー!』
『明日香さんは真田組長とお似合いですよ』
ずっとそう言われ続けてた。
悠紀の隣には私しかいないんだって。
他の女の子と遊んでても、別に気にしなかった。だって、遊びだって分かってた。
それに、最後には私の所にきてくれてたから。
だから、安心してた。
けど、婚約者として呼ばれたのは私じゃなかった…。
小さな下町の組長の娘。
草野青菜という女の子。
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