プリンアラモード

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「佐藤麗菜(さとうれいな)22歳です。 甘いものが大好きで、土日のどちらかはスイーツを食べに出掛けてます」 「おい、新人、自己紹介なんてもう良いから、こっちに来て酒注げ」 「鬼塚主任、佐藤さんビックリしてますよ」 うんうん、ビックリしてます。 新人は自己紹介しろって言ったの、鬼塚主任なのに。 その主任にガン見されながら、怒鳴られ酒注げって言われたから、余計に怖い。 ビクビクしながらビールを注ぎに行ったら、近くに同じ課の先輩、白石亮子(しらいしりょうこ)さんが座ってた。 名前の通り、色白の素敵なお姉様だけど、新人いびりの怖いお局だという噂も聞く。 「佐藤さん、あなたもう学生じゃないんだから、いつまでもスイーツなんて言ってないで語学を嗜むとか勉強を余暇に費やした方がいいんじゃない?そうですよね、鬼塚主任?」 さっそく始まった新人いびりとはこのことか。 白石さんは、帰国子女と言うこともあって英語だけでなく中国語とフランス語を話すことが出来、部内でも評価が高い。 出来る先輩だから、至らない面が目につくのかも知れない。でもやっぱり言われ続けて辛くなる時もある。 今日はまだ大丈夫。何とか笑顔も作れて頑張れてる。 「佐藤さん、鬼塚主任のグラス空になってるわよ」 「すみません」 白石さんに言われ、また鬼塚主任のグラスにビールを注ぐ。 「佐藤さんはそんなにもスイーツが好きなんだ?」 ガン見していた鬼塚主任、聞くのはやっぱりそこですか。 「はい。和菓子も好きなんですけど、基本は洋菓子が好きです」 「そうか、俺は甘いものが嫌いだ」 鬼塚主任は鋭い眼光を更に鋭くさせて言ってくる。 「す、すみません」 「ですよね、鬼塚主任。もう学生じゃないんだから、毎週毎週甘いものっていうのもね。そろそろ卒業した方がいいんじゃない?」 白石さんがまた言い出した。 「はい、わかりました。毎週、毎週というのは卒業します」 なぜスイーツの話をしただけで、休日の行動までとやかく言われなきゃいけないの?多少腹立たしく思いながらも、社会人、社会人……と自分に言い聞かせ笑顔で返す。 飲み会が終わるまで、口に出さずにずっと唱えていたその呪文。 「社会人、社会人……」だったのが、「鬼の鬼塚、お局白石」と二人の名前に変わっていった。
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