プリンアラモード

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社内の雰囲気にも少しずつ慣れてきた5月。 ゴールデンウィークが開けてまもなく、白石さんに怒鳴られた。 昼休みを終えて、部へ戻ってきたら白石さんが向こうの方から大股でやってくる。 「佐藤さん、あなた一体何を聞いてたの!会議資料、部数間違って聞いたでしょ!何やってるの!全然足りないじゃない」 「す、すみません」 用意した資料が足らないと頭から怒鳴られ、どうしよう、どうしよう、ってパニックになっていたら、鬼塚主任の声がした。 「おい、どうした。会議始まるまであと20分だぞ。会場セッティング終わってるのか?」 「鬼塚主任、申し訳ございません。佐藤さんにコピーを頼んだのですが……」 「足らないのか?」 「申し訳ございません、今すぐ不足分コピーし、準備します。ほら、佐藤さんも謝って!」 「申し訳ありません。直ぐに取りかかります。本当に申し訳ありませんでした」 「白石、悪いな。とにかく急いでくれ」 「はい、かしこまりました」 白石さんは鬼塚主任に返事をし、コピー室まで走っていった。 私もその後を直ぐ追ったけど、頭の中では白石さんに依頼された時のことを思い出していた。 聞き間違いなんかじゃない、言われた通りの部数をコピーしてる。間違いない。なんで、白石さんに責められなきゃいけないの?悔しい。 追加分の資料はホッチキス止めまで完了し、どうにか午後からの会議に間に合った。 「ちょっと、佐藤さん来てくれる」 白石さんに呼び出しを受けて、向かった先は給湯室だった。 この給湯室、別名『いびり部屋』とも言われている。 お茶出しの用意をしながら、先輩にがみがみ言われたり、あらぬ噂を流される場所でもあるからだ。 私が最初にお局白石さんの噂を聞いたのも、ここの『いびり部屋』だ。お局白石さんは、鬼塚主任が好きらしいという噂話。確かに、本当だと思う。
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