プリンアラモード

4/10

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「ねえ、佐藤さん。いくら仕事をてきぱきこなせたとしても、部数を間違えてたら意味がないと思うのよ。違う?何で言われた時にメモをしなかったの?メモさえしておけば、こんな初歩的ミスなんてなかったでしょ」 「申し訳ありません。でも……」 「でも、なんて言い訳はいりません。 メモをとらなかったあなたが悪いのですから」 「はい、申し訳ありません」 悔しい!悔しくて仕方ない。 言われて直ぐにコピー室へ行って、コピー枚数を入力したのだから、絶対に間違えない。 「新人は、言われたことだけをやればいいの。それ以上望んでやろうとするのは、今のあなたでは生意気に映ります」 「はい」 え、でも自分の手が空いたら、少しでも役に立ちたいって思っちゃ駄目なの? 忙しくしている先輩に声を掛けてはいけないの? 白石さんの話を聞いてると、それすらも駄目だと言ってるように聞こえてくる。 ただのいびりにしか聞こえてこない。 そんなことを考えてたら、更に白石さんの声が飛んできた。 「なんだかんだ言って、あなた私のこと嫌いなんでしょ。言いたいことがあればハッキリ言ったらどうなの、言いなさい!」 「申し訳ありません」 悔しいけど、言い返すなんて出来なかった。 唇噛んで、その時が流れるのをただ待つだけしかなかった。 泣くもんか、私は間違っていないんだから、泣いてなんてやるもんか。 給湯室である『いびり部屋』の前を鬼塚主任が通っていく。 入り口を背に立っていた白石さんは気がついていない。 鬼塚主任は、しっかりとこの『いびり部屋』の様子を見ながら通っていく。 「佐藤さん、聞いてるの!これからはちゃんと言われたことはメモに取る。同じ間違いは二度としない!いいわね!」 仁王立ちした白石さんは、それだけ言うと、部内へと戻っていった。 「はぁ―― 」 もう、ため息しか出なかった。 ぐっと握りしめていたからなのか、気がついたら掌にツメ跡が残っていた。 「あーあ……」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加