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「猫?」
玄関へ行くと、若い男性が三毛猫を抱えて立っていた
「さっき見つけたんですが、首輪にここの住所があったもので…」
我が家では猫はおろか動物の類いは飼っていない
お母さんがアレルギーだから
「はいはーい♪ありがとねー♪」
戸惑っているあたしの横を抜け
ガラシャが猫を受け取った
「それじゃ、僕はこれで。」
猫の頭を撫でて男性は帰っていった
玄関の戸が閉まり
男性の足音が遠ざかっていく
「茂ちゃん久しぶりぃ♪『今度は』猫なんだねっ!可愛いぃ♪」
あたしの目が悪くなければ
ガラシャは確かに猫に話しかけている
この猫は『しげちゃん』というのか
それと『今度は』って…
「あぁ、猫は目立たないからな、それに機動力もある。簡単に敵の背後に回れる。それにこの爪と牙だ。見てみろ、この鋭利な形状を。これならどんな敵も怖くはないぞ。」
ガラシャに抱えられたまま
猫が猫の説明をしている
自身の爪と牙を見せ、鬱陶しいくらい丁寧に
ガラシャはただ「うんうん♪」と相槌をしている
その光景を見たあたしから発せられた言葉は
あまりにも幼稚で
尚かつ直球だった
「猫が喋ってるー!?」
「………この眼はもっと凄いのだ。暗闇でもはっきりと視える。闇に紛れて襲うことも可能だ。それからこの耳なのだがな…」
「しげちゃん」は一瞬あたしを見たものの、すぐにガラシャに向き直り
また猫の性能を語りだす
止まらない
ガラシャはそれを止めようともしない
「ちょ、ちょっと聞いてんのっ!?」
「ごめんね、茂ちゃん『こう』なると最後まで説明しないと気が済まないのよー。」
「えぇ!?ど、どれくらいかかるの?」
「んーとねー……8時間くらいかな?」
「はぁ!?」
「あっ、ヒカリは寝ちゃいなよ。疲れてるでしょ?」
このやりとり中にも「しげちゃん」の説明は止まらない
今は他の動物との比較や、猫の習性についてだ
「この状態で寝れるわけないでしょ!?」
「んー……じゃあ、こうしよう♪私の瞳を見て…」
言われるがままにガラシャの瞳を見つめる
すると、徐々に身体が重くなる
倦怠感と眠気に襲われ、ふらふらする
そのままよろめいて壁に当たり、その場で崩れ落ちた
もう瞼は重い
薄れゆく意識の中で「しげちゃん」の声が聞こえる
「ネコ科の動物は素晴らしいだろう?ネコ科といえばライオンの……」
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